昨年11月19日、熊本県の蒲島郁夫知事は、川辺川でのダム建設を柱とする球磨川治水対策の方向性を打ち出した。昨年7月豪雨をきっかけにダム議論が再燃し、わずか4カ月で、平成20年に自身が表明した白紙撤回から180度の方針転換を果たしたことになる。短期間で難しい決断をした背景には、早急に抜本的な対策を講じなければ、流域の安全を守れないという厳しい現状認識がある。過去の決定を覆すことになり、また、ダムだけで被害をゼロにできないとしても、必要な事業ならばすぐに着手するほかない。球磨川の治水対策は、気候変動時代の公共事業の在り方を示す一つのモデルケースになるだろう。